第37号 2013年10月15日

一枚の絵をみて感じたこと

 看護部長 辻村淑子

 

外来のロビーに川田 美緒さんから寄贈され た“重たい網”という 一枚の絵があります。 何かほっとする絵を 見て、網一杯にかかっ た魚から“人を漁ど る”という聖書のルカ 福音書5章にある一説を連想しました。 湖の岸辺には、ガリラヤ(イスラエル北部) 湖で夜通し漁をしていた漁師たちが、思った収 穫を得られずに漁から戻り、舟から降りて網を 洗っていた。イエスは舟から群衆に教えられて いた。話しが終わるとペドロに「深みに漕ぎ 出して、網を降ろして魚を取りなさい」と言わ れた。ペドロは「私たちは、夜通し働きました が、何一つとれませんでした。でもお言葉通 り、網を降ろしてみましょう」と応答した。ペ ドロは一晩中網を降ろしても魚を捕ることので きなかった自分の能力不足を認めながら、その 通りにすると、たくさんの魚が入り網は破れそ うになった。そして、ペドロはイエスの弟子に なり「人を漁る漁師」のようになったというお話しです。

 私は、「ただ網を降ろした」という枠にとらわれず網を降ろす意味を探求したペドロのように、看護も一つ一つのケアが患者さんのためになっているという看護の意味付けによって魅力ある看護につながっていくと思います。

 成果を重視するあまり、その日を振り返って「今日は一体何をしていたのだろう」、その日の努力が無駄に思える日も多々あります。

 しかし、患者さんにとって、もともと備わっていた機能を突然の疾患や事故等によって奪われる絶望感は計り知れないものがあります。

私たち看護師やケアワーカーの日常業務の一つに、排泄のお世話や更衣があります。「療養上の世話に携わるエキスパート」である私たちは、時に、他人の世話にならない幸せや自己決定できる自由に無頓着に過ごしていないでしょうか?

 私たちにとって、技術よりも知識よりも、患者さんとの信頼関係を構築できる「人となり」を持ち合わせていることが必要不可欠であり、看護の強みになるはずです。看護・介護職員一丸となり、武蔵野陽和会病院を利用してくださる患者さんに支えられながら、患者さんのケアをさせていただいています。看護部では、一人の人間として成長していける教育に特に力を注いでいます。使命感を持って、活動的に魅力的な看護ができる職場づくりをしていきたいと思います。

 最後に、最近読んだ詩集の一節を紹介します。

『老いること』

老いることが

こんなに美しいとは知らなかった

老いることは

鳥のように天に近くなること

花のように地に近くなること

しだれ柳のように自然に頭のさがること

老いることがこんなに楽しいとは知らなかった

坂村真民詩集(サンマーク出版)

看護部長 辻村淑子

 

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